終章
声をからし、とめどない涙を流し、丸まった背中を打ち震わせながら泣きました。
泣いて。
泣いて。
泣いて。
泣いて。
泣いて。
泣いて。
泣いて。
泣いて。
泣いて。
泣いて・・・
不意に俊夫は、姫子を部屋に置いて、一人で外に出て行きました。
雨は上がっていましたが、折からの雨で、まとわり付くような夏の夜です。
人は死んだら、星になると俊夫は幼い頃に聞いたことがあります。
そのことが関係しているかどうか一概には言えませんが、どこにでもあるような街の夜景を一望できるいつもより少しだけ星に近くなれるような高台の上に気が付けば、俊夫はいました。
そして、暫くすると、ただ「ありがとうありがとう」と叫びはじめました。
それはもう、まるで狂ってしまった厭人狂者が世を果敢なみ、しかし、この世に生を受けた事への強烈な感謝を表現するためにただ連呼するかのように見えたでしょう。時を同じくして、その高台の上に居た、幸せそうな男女数組からは、確実にそう見えたはずです。
しかし、俊夫は(と言っても、あくまでも無意識下の行動ではあったのですが)ただ「ありがとうありがとう」と叫び続けました。
叫び続けながら、人間が本当に絶望したときに現れる感情とは、感謝なのだなぁと、どこかで冷静に思いました。
日付の変わるような時間。
雨上がりの空は、雲ひとつ無く、空気がよどむ夏の夜でも、星ははっきりと光っていました。
臭いなどは気にはなりませんでした。